南の国の男、北へ '94晩夏 
〜 アフリカツインで駆け回った北海道ツーリング日記 〜

・Day_10

 '94/09/03

 いよいよ北海道を離れる日が来てしまった。10日間。短いかもしれないとは思っていたが、やっぱり短かった。まだ、ここにもあそこにもいっていない。そんな想いが募る。

 今日は苫小牧まで行けばいいのだから、とゆっくり準備していたら、ハウスの近くの道を軽装のオフロード車がすっトバしていくのが見えた。ヒダカの準備をするマーシャルたちであろうか...。そんなことを考えながら、ハウスを離れた。苫小牧まではそんなに距離はなく、フェリーの出発時間までをヒマをつぶすように、寄り道をしながらゆっくり走る。

 観光スポットだったケンタッキーファームでは、奥の馬場で追いきりや坂路調教を見たりしていたが、やっぱり場違いな自分の服装の為、早々に退散してしまう(苦笑)。

 そのかわりに、戻ったところにあった義経神社では資料館の眺めるなどのんびりし、また神主さんに話しかけられ、いろいろ話し込んでしまった。ウサン臭い宗教は嫌いな自分であるが、こういう人たちの話は何かしら得るものがあるような気がする。もっとも、忘れやすいタチの自分であるからして、それが活かされるとは思わないのであるが(大爆笑)。

 義経神社ですっかり話し込み、そろそろ苫小牧に向かう。国道沿いのドライブインでメシを食っていると、旧いオートバイが走っていく。

「そういや、北海道ミーティングはこの時期だっけ...」

 旧いオートバイが富良野に集う北海道ミーティング。9月の第1週の土・日に行われるこのイベントには、自分のオンボロでいつかは行ってみたい。そう思いながら、また走り始めた。苫小牧まであと少し...。

 とうとう着いてしまった。

 10日前には、初めて北海道に降り立ち、フェリーでの長旅に疲れながらも、興奮していた自分がここにいた。ここでいったい何と出会えるのだろうか? 何か見つけることができるのだろうか? 大きな期待と小さな不安が入り交じる中でここを離れて行った。

 そして、再びここに戻ってきていえるのは、自分自身は何も変わらず(少しは変わったのかもしれないが)、ただ、多くの人、モノ、風景に出会い、北海道に旅立つ前の自分の中の傷が、少なからず癒されたことだった。

 結局、東京で失ったモノを見つけることはできなかったが、この10日間で感じたことはそれ以上。きっとこの時でなければ出会えなかったし、感じなかったモノばかりであったろう。

 ターミナルには各地で出会った数多くのみんながおり、それぞれが自分の家の方向に向かうフェリーに乗って帰っていった。なかでも富良野であったにーちゃんは、一緒に大洗行きのフェリーに乗るということもあって、船内での行動を共にした。

                         ( 本日の走行距離、210km )

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 '94/09/03

 船上で陽が昇って沈むまで過ごしたあと、フェリーはいよいよ大洗へ。東京での生活が戻ってくるのか...。

 いけね、感慨にひたってる場合じゃなかった。有明まで部屋のカギ取りに行かなくっちゃなんねぇんだ(大爆笑)。

− 劇?終 −

 


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